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特撮(時にアニメも)キャラや作品を面白く雑談するブログです。


by kosaisiarai

海は青かった(ウルトラファイト)

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五分間番組「ウルトラファイト」をご存知の特撮ファンはもうオジサンの年齢なのでしょう。とは言えDVD化もされてはいますが。でも、開き直ったようなバカバカしさに付いて行けない人や、逆に変にハマってしまった人も世代を問わずにいたのでは?それにしても、大阪万国博とスポ根ブームで沸いた、特撮ヒーロー不在の1970年において、第一次と第二次の怪獣ブームの間を繋げた番組でもある訳ですね。或る意味における「円谷パワー」を感じさせる作品でもありました。
そんな作品群の中から一本、最高傑作との評価の高い「海は青かった」のエピソードを紹介しましょう。
ウルトラセブンが海辺を歩いている。何気なくポンと蹴った岩(勿論、発泡スチロール製だが)が転がって、崖の下で寝ていたエレキングに当たってしまう。怒ったエレキングはセブンに怒りをぶつける。何時もならセブンの技が炸裂する、筈なのだが、この時ばかりはセブンはエレキングにただただ一方的に殴られたり蹴られたりの一方で自分から相手を攻撃するという事は一切しない。ただただ頭を下げるだけ、その気になればエレキングに勝てるのに、ただただ戦いを拒否している。そう、セブンは自分自身の過失行為を全面的に認め、詫びているのである。どんなに理不尽な仕打ちを受けても、相手が誰であろうと、ただただ謝るだけである。セブン自身に決して悪気があった訳でもないのに。
やがて疲れたのか気が済んだのか、エレキングはその場を立ち去る。しかし、倒れたままのセブンはエレキングの後姿に手を合わせて、最後まで詫びのポーズを続け、その場でガックリと気を失ってしまう。という、何とも最後まで救いのない内容である。他の特撮関連のブログには「エレキングがセブンに唯一勝利した回」とあったが、セブンは本当に負けたのだろうか?否、セブンは勝ったのだ!自分自身に勝ったのだ。
もしもサブタイトルが「セブン 自分自身との戦い」とか「セブン!君は真の英雄だ」とか「真の勝者 セブン」とかだったら、見る側にももっと救いがあっただろう。しかし作り手は故意的に「救い」の表現を一切避けてあえてカオスなサブタイとした。ナレーションの人も救いとなるような言葉を一切入れない。そうする事で作り手は私達に答えを探させたのだと思う。実際、当時この回を見てやりきれない気分になった人が大部分だと思う。しかし、この理不尽な物語に救いを与えるのは、実は私達自身だったのである。
「セブンを見習え!」とまでは言えない。漫画「おそ松くん」にも、「わざとやったんじゃないんだぞ!それに謝ったじゃないか!」と、おそ松がチビ太に逆ギレするシーンがあるが、普通の人ならそれが当然のレベルだろう。しかし、セブンはヒーローである。弱者を守るためとはいえ、エレキング達の暴力や弱者いじめ行為は決して許さない、しかし自分自身にも厳しいし、またヒーローとしての真のプライドの持ち主だ。強さを求めるといった戦いのための戦いはしない。自分の強さに責任を持ち、戦いを基本的には否定する平和主義者でもある。
セブンを見習うとまではいかなくても、エレキングのような人間には決してなりたくないし、なってはならない!誰もがそう思って欲しい。たとえ相手が自分よりも強かろうと弱かろうと、また地位や身分の違いがあろうとも、自分自身の過失は頭を下げて心から詫び、また、相手の過失に対しても、そこに悪意が無く謝罪の姿勢がある場合はそれを理解し、寛大な態度で許す心が必要である。
強さや力は弱者を蹂躙するための「特権」ではなく、弱者を守り助けるための「責任」でなければならない。その事を体を張って教えてくれたのがセブンであり、逆にエレキングこそが本当は卑劣な臆病者であり真の弱者であるのだと思う。
by kosaisiarai | 2014-01-12 10:27 | ウルトラ怪獣